桐生八木節

お囃子にあわせて唄い、輪になり踊る これが桐生の夏 2022年8月6日の桐生市の様子をレポート

新型コロナウイルス流行の影響で、中止が続いていた桐生八木節まつり。 しかし2022年の今年は、全日本八木節競演大会・子ども八木節発表会・ダンス八木節の3つプログラムに規模を縮小し、感染対策を徹底しながら念願の復活を遂げました。 同時に市内の五ヶ所でそれぞれ、“桐生新町夏まつり”・“桐生もりもり八木節まつり”・“きりゅう夏祭り”・“ちょっと桐生まつり”・“グルメ屋台”(8月7日のみ)といったお祭りも開催。

例年とは違った複数箇所での開催ではありましたが、桐生の夏が帰ってきたのです。 今回は8月6日に行われた、桐生八木節まつり、そして市内のお祭りの様子をレポートしていきます。

20代〜80代まで総勢60名以上が競う、全日本八木節競演大会

まずお届けしていくのは、美喜仁桐生文化会館・小ホールの全日本八木節競演大会。

普段は屋外での開催ですが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、室内での開催となりました。入場の際には体温を測定する必要があり、万が一のときのために氏名や住所なども用紙に記入して提出。引き換えにもらえるシールをマスクに貼ることで入場が可能となります。

また小ホール内でも感染対策が徹底されており、観客席は一席ずつ間隔を空けるよう案内がされていました。

出場者が待機する舞台袖では、椅子を等間隔に設置し、密を防いでいました。 出場者が演奏するステージにはパーテーションが置かれ、観客席へ飛沫が届くことを防いでいます。くわえて出場者同士が感染してしまうのを防ぐため、一人ひとりにマイクカバーが渡され、演奏と同時に設置、終了とともに外す、という対策が施されていました。

開会式では、桐生八木節連絡協議会・諏訪会長より 「最初は応募者が少なく、心配だったが最終的に60名以上の方々に参加していただけました。参加者は20代から80代までと幅広く、50代以上の方が多い一方で、若い方も確実に参加してくださっています。本日は存分に八木節を競い合っていただけたら。」と挨拶がありました。

その後は、出場者全員による、予選会が執り行われました。 予選会では、参加者それぞれが任意の八木節音頭をお囃子に合わせて2節ずつ唄い、その上手さを競い合います。

お囃子を務めるのは桐生八木節民謡会と藪塚八木節愛好会。出場者はそれぞれの八木節を披露し合い、感染対策用のパーテーションをものともせず、観客席に迫力を届けていました。

樽を叩く腕に留まらず、激しく体を揺らしながら唄う出場者や、静かな佇まいで厳かに、それでいて体の芯に響くような唄い方をする出場者など、参加者それぞれがもつ個性に圧倒されてしまいます。

途中休憩を挟みながら、予選の演技が終了したのは14時ごろのこと。最後には観客より出場者へ、大きな拍手が贈られました。5名の審査員は、神妙な面持ちで予選通過者を選定していきます。

その間、同じステージでは桐生八木節キャンペーンスタッフが演舞を披露。唐傘や花輪を用いた華やかな踊りで、会場を沸かせていました。


壮絶な掛け合い勝負 制したのは22歳の若手・岡田さん

 

その後、準決勝に進んだ20名が発表され、予選とは違った4節を唄い、技術を競い合いました。4節となったことで、力を出し切るだけでなく、長く音程を保つ技量も試されているようです。

そうして決勝戦に駒を進めたのは4名の出場者。決勝戦は、一人で挑んできたこれまでの演目と違い、掛け合いという演目で審査が行われます。

「八木節の一節を順番にぶつけ合う」といったもので、唄の上手さだけでなく、即興力や精神力も試されるとのこと。近年でいうラップバトルに近いイメージでしょうか。

予選から数えて3回目の八木節音頭となる決勝出演者たち。しかし演奏中には、この場を楽しむかのように笑顔を見せるなど体力の消費を感じさせない、見事な八木節を唄い切っていました。

そうして優勝したのは、若干22歳の若手・岡田優太さん。八木節を本格的に始めたのは3年前だというのですから驚きです。

賞状やトロフィー、優勝者の証である法被を授与されたのち、岡田さんにとって本日4回目となる八木節音頭を披露。岡田さんは、最優秀者 音頭披露でも、迫力ある声量で唄い上げ、笑顔を浮かべながら、第33回全日本八木節競演大会の場を楽しんでいました。


大人も子どもも踊り廻る これぞ桐生の夏

美喜仁桐生文化会館で演目が行われている頃、市内の5ヶ所では、有志の方々が設営・出展したお祭りが開催されていました。

写真は“桐生もりもり八木節まつり”の様子。 どの会場でも入口には消毒用アルコールが設置され、みなさんマスクをしっかりと着用されており、感染対策の呼びかけが徹底されていることが窺えます。 また5ヶ所での分散開催となったことで、3密の回避にも繋がっているようです。

浴衣など祭りの装束に身を包んだ人々が街を行き交う姿は、とても風情のある光景でした。

どの方々もとても嬉しそうで、まるで耐え忍んできた2年分の楽しみを一気に発散されているかのようです。

会場ではそれぞれ、市内で活動する八木節グループが櫓やステージに立ち、桐生八木節のお囃子を演奏していました。

下の写真は「桐生もりもり八木節まつり」の別会場で、夕方に撮影したもの。櫓では、桐生八木節連絡協議会所属の桐雅会の方々が演奏をしています。

こちらは「きりゅう夏祭り」の様子。お囃子を演奏しているのは、桐生八木節連絡協議会に所属している上栄会です。 早い時間帯ではお囃子を聞き入っていた一般の参加者の方々は、夜が近づくにつれ自然と踊り出していました。

有鄰館・桐生歴史文化資料館駐車場で行われていた“桐生新町夏祭り”では老若男女関わらず、たくさんの方が、桐雅会の演奏する八木節に合わせ、輪になって踊っていました。

桐生八木節の音やリズムが、桐生の人々の体に刻み込まれていることが伝わってきます。

一番の盛り上がりを見せていた“ちょっと桐生まつり”はクラウドファンディングで資金を調達したとのこと。桐生の人々が祭りに寄せる想いが読み取れるエピソードです。

櫓では桐生八木節連絡協議会に所属する、昭友会などが八木節を演奏。 陽が沈み辺りが闇に包まれるころには、輪も数倍、巨大なものに。踊り手の動きも激しさを増し、見物する人々もどこか懐かしそうに、その光景を眺めていました。